小児のコロナワクチン;打つべきか 打たざるべきか

新型コロナウイルスに対するワクチンは接種対象年齢が段階的に下がり、3月からは5~11歳の小児に対しても行われるようになりました。

2021年11月30日に日本で初めて確認されたオミクロン株が瞬く間に国内流行第6波を形成しました。

いかにこの波を終息させるかに政治家や医療関係者を始めとした多くのリーダー達が知恵を絞っています。

そして、その対策の中のひとつが小児へのワクチン接種なのです。

ただ、以前から小児科医の間では、基礎疾患のない健康な小児に対してワクチンが必要なのかという点で議論が分かれています。

全国の小児科医が参加しているメーリングリストでも積極派と慎重派が意見をぶつけ、普段は論理的で温厚な文章を投稿している先生達も感情をあらわにする場面がみられます。

それ程、自分の信念に基づいて熱い思いで意見を発信しているのです。

 

ワクチン接種がこどもの健康にとって有益か否かを考えるにあたり、

①小児におけるオミクロン株による感染の重篤性
②小児におけるオミクロン株へのワクチン効果
③小児に対するワクチンの副反応

を天秤にかけ判断する必要があります。


ただ、限られた情報のなか、今も議論が分かれているというのは上述の通りです。

それでも大多数の小児科医が同意するのは、こどもと保護者にワクチンのメリット・デメリットをわかりやすく、それでいてしっかりと説明し、そのひとたちの受けるか受けないかの意思を尊重するということです。

ただ一般小児科医には、カゼなどで受診される患者さんから “診察のついで” にワクチン接種の是非を問われてもしっかりと説明する時間などはありません。

日本小児科学会は、ホームページに2022年1月19日付で 

【5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方】file20220119

という文章を出してくれました。

おそらく多くの小児科医はこの声明を親御さんに読んでもらって打つ打たないを決めてもらっているのではないでしょうか。

 

そこには、小児科学会は5~11歳の健康な小児にもワクチン接種は意議があると書いてあります。

そして説明を読むと、自分のこどもにもワクチンを打たせた方がいいと思う親御さんは多いと思います。

このように日本の小児科医のトップの先生方が集まり声明を出したわけですが、私のような凡人小児科医にはわからないことがあります。

その声明の説明内容を一部抜き出してみました。


1)国内における5~11歳の新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)症例の大多数は軽症ですが、感染率が同年代人口の1~2%にとどまるなかでも、酸素投与などを必要とする中等症例は散発的に報告されています(参考文献)。今後、全年齢において感染者数が増加した場合には、ワクチン未接種の小児が占める割合が増加し、小児の中等症や重症例が増えることが予想されます。
   ・ ・ ・
4) (前半部略) 海外では、5~11歳の小児に対する同ワクチンの発症予防効果が90%以上と報告されていますが、新しい変異ウイルス(オミクロン株など)への有効性を示すデータは十分に得られていません。


1)  についてですが、そ の参考文献は、2021年1月1日から2021年2月28日までの日本での18歳以下のコロナで入院した1,038人のデータです。
2021 Sep 6

表には、各年齢層での症状が記載されており、6~12歳の層もあります。

この論文で書いてあることは、コロナ感染は無症状や軽症が多い、年齢層別では新生児・乳児と13歳以上は症状を呈する割合が多い、本研究ではいわゆるLong COVIDといわれる後遺症の検討はされていないのでそこまではわからないというものです。

学会が言う、” 小児での感染者数が多くなれば5~11歳の年齢層でも中等症・重症症例も増える” ということは当然ですが、この論文からその考察を導き出すのにはやや飛躍していると感じてしまいます。

更に、この論文はオミクロン株以前の調査であり、一般的に症状は軽いと言われるオミクロン株流行期での5~11歳の小児感染者の症状はどうなのかといった新しい情報が求められます。

また、4) に関してですが、親御さんと話をすると、殆どの人がこどもにコロナワクチンを打てば90%の感染予防効果がずっと続くと思っているようでした。

しかし、ウイルスの中和抗体は時間の経過と共に大きく低下することは医療者の間ではよく知られていました。

そして最近また、オミクロン株に対するコロナワクチンの発症予防効果についての論文がイギリスから出ました。
Covid-19 Vaccine Effectiveness against the Omicron(B.1.1.529) Variant    NEJM 2022 Mar

これは18歳以上の人に対するワクチン効果の検討ですが、ファイザーワクチン2回接種後2~4週間では65.5%であったものが25週以降には8.8%に下がるというものです。

そして、3回目のブースター接種をするとまた効果が出るがそれも時間とともに薄れていきます。

もちろん、このことが5~11歳の日本の小児に完全に当てはまるかは不明ですが、似たような動きをするものと予想は出来ます。

こどもにコロナを発症させないためワクチンを打たせたいという親御さんには、それを目的とするのであれば何回も繰り返し打たなければいけない可能性もあることを伝えなければいけないと思うのです。

もっとも、コロナが感染症法の分類で II 類相当からV類になるまでの間だけ感染を防ぎたいと思っているひとも多いでしょうから、何度も繰り返し打たせようとは思わないかもしれませんが・・・

 

現時点では、小児科学会のホームページでの説明は2022年1月19日付のままです。

今は、オミクロン株だけでなく、俗に言うステルスオミクロンBA.2株の感染性・病原性にも注意が必要になって来ています。

関係している学会の先生方は、ただでさえ自らの診療や研究で忙しいなか、眠る時間を削りコロナの情報収集と解析に追われていると思います。

アップデートされていないのは、中途半端な情報を安易に追加するのは単に混乱を生むだけと考えているかもしれません。

ただ、私のような末端小児科医は学会の提言を後ろ盾にして診療をしているので、細かなアップデートを期待しています。

 

 

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